トマスの疑い深い資産運用

アラフォー日本人男性兼業投資家。日々勉強中です。

AI

ジェリー・カプラン『人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き』★★★★

 事前の計画ではなく、図書館の新刊コーナーでたまたま見かけて手に取ったが、結果的に正解。AIと人間の失業に関する本の中では、かなりのおすすめ。

 人工知能と経済の双方とも、ちゃんとわかって書いていている感があり、なおかつ通り一遍ではない独自の見解をちゃんと主張している。この両方の条件を満たす本は、私は初めてだ。

 最終章の数ページだけ、もうすぐ書き終わると思って気が緩んだのか、急にいい加減な放言くさくなってしまうが、本全体の趣旨にはほぼ影響ないし、解説でちゃんとツッコまれてるので、まあご愛敬で許せるレベル。全体としてはおすすめ。

長期投資もAIに置き換えられるのか?

 という記事を書いたばかりだが、長期投資も結構やばいというような記事が日経に出たらしくて、その話についても少しだけ。

 前回書いたとおり、長期投資(とりあえず「年単位」と定義する)はそう簡単にAIに置き換えられることはないし、置き換えられたとしても、そのインパクトは短期投資ほど劇的なものにはならないと考えている。

 まず「長期投資が得意」と言ったときに、

  • 遠い未来を正しく予測できる
  • 気が長くじっと待てる

 という2通りの意味を分けて考える必要があるだろう。

 1年後の天気予報を、明日の天気予報と同じように当てることはできない。単に今はまだできないというのではなく、文明がいかに発達しても未来永劫できるようにはならないと信じる根拠がある。

 それはなぜか、というところまでは、このエントリではつっこめないが、長期的な経済や株価の予測が、長期天気予報と同等以上に困難なのは、ほぼ確実である。

 要するに、遠い未来を正しく予測できるという意味での長期投資は、人間にも不可能なのだ。それができるならバフェットはちゃんとAMZNを買えているはずだろう。そして、人類にできないことはAIにもできない。

 次に、後者は、当然AIの方が得意でありうる。というか、絶対に得意だ。"sleep 100 years"とプログラム(?)すれば、群集心理にも流されず感情的ミスも犯さず、じっと待てるだろう。

 しかし、長期投資において、人間が「気の長さ」を競う相手は、AIではなくそのAIを使う別の人間であるから、AIが人間よりそれが得意かどうかは、そもそも問題にならない。

 極端な話「100年間全く儲からないが101年目から毎年倍になる超AI」が実在したとして、あなたは使うだろうか? 他の人間にそれを使われたら脅威だと思うだろうか?

 では、AIによる長期投資は全く問題にならないかというと、もちろんそういうわけでもないだろう。

 大量のデータの中から、他の人がまだ気づかない相関にいち早く気づく、というような意味での長期投資は、AIの方が得意になりうる。

 具体的に言えば、たとえばシクリカルの大型株への投資で、個人投資家が市場平均を出し抜いて儲ける余地は、小さくなっていくのではないかと思う。

 逆に、今はまだデータ化されてい「ない」データを調べるとか、今はまだ存在し「ない」需要やサービスに気づいて、それを提供しようとしている新興小型株に投資する、とかいう形の投資チャンスは、まだまだ個人投資家、というか人間の手に残されるだろう。

 たとえば、どこで見た話か忘れたが、石油タンクの写真をドローンで撮影して、写真をAIで分析して石油の需給を予測して儲けているところがあるそうな。

 この話で重要なのは画像認識AIではない。すごいのはアイデアと、実際にドローン群を運用することの方であって、ドローン+写真を見る人間の方が、ドローンなしのAIより、当然良い成績を出すだろう。

 AIが「石油タンクをドローンで撮影しまくったら石油価格先回りできるんじゃね?」というアイデアを出してくれることはない。個人でドローン群の運用は無理でも、同じようにコロンブスの卵的なアイデアと調査で市場を出し抜く余地は、まだ当分あるはずだ。

(それすらなくなる日には、どのような意味であっても、投資をする必要もなくなっていることだろう。)

 アラン・ケイ「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」という有名な言葉がある。一年後の天気を予測することはできなくても、一年後の天気をコントロールすることならいずれできるようになるだろう。

 個人投資家に求められる能力も、予測というより発明に近いものになっていくのではないか。おそらくそれは従来より難しい。その意味で、長期投資にもAIの脅威がないとは言えない。それこそ長期的に考えて対応していく必要があるだろう。

投資は短期のものほどAIに置き換えられやすい

 の記事で、すでにちらっと言及したことがあるが、私はあまりデイトレをしない。

 やってできないことはないと思うし、どちらかというと儲かる可能性もあるが、むしろコミットすることを意識して避けている。

 最大の理由は、今後真っ先にAIに奪われる(もしくはすでに奪われた)ポジションだと考えているからだ。

 等の話にも関連するが、投資は短期のものほどコンピュータ向きになる。投資を大雑把に時間で分類すると、だいたい以下のようになるだろう。

  1. スキャルピング(秒)
  2. デイトレ(分・時)
  3. スイング(日・週)
  4. 中長期(月・年)

 本当はこの上にさらに0:HFT(コンマ秒以下)の領域があるが、もともと人間はできなかったことだから、今回は省く。

 このうち、1と2の半分ぐらいまでは、すでにAIの方が優位な領域になっていると思われる。そして今後二度と人間に優位が戻ってくることはない。

 対して、3,4はそう簡単にAIに置き換えられることはないし、置き換えられたとしても、そのインパクトは1,2ほど劇的なものにはならないと予想される。

 短期投資が何か悪いとか、スキャルパー・デイトレーダーが何か他の人間より劣っていると言っているのではない。(プロ棋士は頭が悪い、と言っているのではないのと同じく。)コンピュータ・人工知能が比較的得意な仕事をしていると言っているだけだ。

囲碁将棋を知性の代表と捉えるのは正しくない

 囲碁で人類完敗のニュースをきっかけに、AIとかシンギュラリティ(笑)をめぐる議論によくある誤りのひとつについての話。

 にも通じる話なのだが、囲碁・将棋などが、(人間)知性の代表あるいは頂点であるかのように見なされているのは、端的に言って間違いである。

 AlphaGoは確かにすごいけれども、囲碁のルールそのものは極めて単純で、最もコンピュータ向きの題材なのである。あくまで有名ボードゲームの中で探索すべき局面数が最も多かったというだけなのだ。

 今すぐに雇用が危ういのは、あくまで脳でコンピュータ(向きの計算)をシミュレートするのが能であった人、それが人間にとって不自然であるが故に希少で優位性のあった仕事である。

 「コンピュータ」という単語は元々人間の職業を指す言葉だった。そろばんや筆算で計算するのが仕事です、という人がいなくなってからすでに何十年も経つ。その次ぐらいにコンピュータ向きの仕事がプロ棋士だったというだけなのだ。

 コンピュータがまたプロ棋士の次ぐらいにコンピュータ向きの仕事を奪うにはまた十年単位の年月がかかるだろう。

未来の工作機械

 最近の3DプリンタとかAIとかの発展を見ていると、そのうち「見ただけではなんでこんな製品が出来上がるのかまったくわからない工作機械」みたいなものが出来てくるのは間違いないと思う。

 現在「生産ライン」と呼ばれるものは、人間が中に入って整備できるとか、そのためにはそもそも地面に設置されていななければいけない等々の物理的条件以外にも、人の思考の制約によってライン(一次元)になっている部分があるだろう。

 その制約が外れると、未来の工作機械は、三次元にぎっちりつまったループゴールドバーグマシンのようなものになるのでは?

 人が見ても、どの部分が何のためのものか一見さっぱりわからないけど、動作するとなぜかきっちり原料から目的のモノが瞬時にできあがる、というような。

 ……とまあこんな空想をしてしまうぐらいにはFactorio脳である。0.15がstableになったら、フリープレイモードをもう一度やってみよう。

櫻井豊『人工知能が金融を支配する日』★

 他の本の引き写しばっかりで内容薄い。以下に挙げたような本でも読んだ方がいい。

松尾豊『人工知能は人間を超えるか』★★★★★

人工知能は人間を超えるか

 Audible版が出ていました。3.0倍速でも問題なく聞けます。

松尾豊『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』★★★★★

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)

 読んだのは大分前だが、ここで取り上げる意味が出てきたと思って紹介。

 ディープラーニング以降のAIブームについて一番良い本だと思う。

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