トマスの疑い深い資産運用

アラフォー日本人男性兼業投資家。日々勉強中です。

行動経済

優待を使った富の世界間移転によるメンタルハック


 行動経済学でよく言われることだが、金銭を他の物品に変えてワンクッション挟むと、しばしば行動が変化する。(会社の金庫から金を盗まない人も同じ金額の備品は盗む、ギフトには現金より金券が好まれる、等々。)

 これは詰まるところ、金銭≒数字は進化的に新しすぎて、意識して抽象的な思考を駆使しなければ扱えない、ということに起因すると思われ、根本的には一朝一夕でどうにかなるものではない。

 私は、数年前から、純投資理論的にはほとんど意味のない三倍優待口座や優待クロスを、割としっかりやるようにしているが、この容易に変えられない事実を逆手に取った心理的テクニックとしてやっている面が大きい。

 で以前詳しく書いたように、投資世界と日常世界を別のものとして、それぞれの世界でのお金を同じであって同じでないと考える二重思考が、パフォーマンス上重要である。

 同時に、投資世界である程度お金が増えたら、多少は日常生活も豊かにしたいところである。でないと、そもそも何のために投資をしているのかわからなくなってしまう。

 しかし、単に出金すると、それはお金であってお金でないという、必死で保っている幻想を、ダイレクトに破壊する効果をもたらしてしまう。どうしたらいいだろう?

 そこで挟むワンクッションが優待だ。投資世界では、あくまで株の長期投資であると考え(クロスはともかく三倍優待の方は本当にそうだ)、日常世界では(お金を引き出しているのではなく)あくまで関係先から季節のギフトが届くだけと考える。

 これによって、投資メンタルも日常メンタルも狂わせずに、二重思考を保ったまま、安全に少しずつ、投資世界から日常世界に富を移転することができるのだ。

 なお、最近投資クラスタで盛んになりつつある優待警察に対するアリバイを提出しておくと、クロスはもちろん優待制度についても、以前から全否定派である。

『実践 行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択』★★★

 リチャード・セイラー著、キャス・サンスティーン著。ノーベル賞にかこつけて過去書評。行動経済学自体についてはさほど目新しくはないが、それを社会制度にどう応用するかに重点が置かれている。

 ナッジ(nudge)という概念はライフハック的にも役に立ちそう。憶えておきたい。大雑把に言えば、長期的に考えて望ましい選択肢を自ら選ばせるための後押し、といったところか。

ダン・アリエリー『不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」』★★★

 過去書評。『予想どおりに不合理』を読んで面白かったら、これも。

ダン・アリエリー 『ずる 嘘とごまかしの行動経済学』★★★

 過去書評。これもアリエリーの行動経済学本。タイトル通り(ちょっとした)不正にスポットが当たっており、実用的で面白い。他人の不正を防ぐというのもあるが、何より自分自身をモニターする意味で。

ダン・アリエリー『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』★★★★★

 過去書評。行動経済学本。この人の本はどれも水準以上で面白いが、最初の一冊あるいは一冊だけ、という条件ならまずこれを薦める。

 もしかしたら投資にも役立つかも知れないし、自分の日常生活や消費行動も変わるかも知れない。

バリュー投資家は「頭がいい」のか?

 要約すると「バリュー投資家は頭がいい」ということが言われることがある。「バリュー投資家」の代わりに「長期投資家」が入ることもある。

 事実上「短期トレーダーは頭が悪い」と言っているも同然なので、炎上とまで言わなくても論争になりがちである。

 私の意見では、この主張そのものは間違いであるが、そう言ってしまいがちになる背景となる事実はあり、それを特定することによって、無意味な論争を避けることができると思う。

 行動経済学で双曲割引という概念がある。ここで詳しく説明はしないが、時間による割引率が、高い≒近視眼的・低い≒長期的と考れば、大きな間違いはないだろう。

 そして、

  1. 時間割引率の極めて高いバリュー・長期投資家はまずいない。
  2. 時間割引率の極めて高い人間は、日常的に使われる概念では、単に「頭が悪い」と表現されることが多い。

 の2点までは、定義そのものから言っても、事実としても、現実に成り立っている関係だと思われる。

 つまり、単純に「長期投資家は頭がいい」とか「短期トレーダーは頭が悪い」と言ったら間違いである。頭の悪いバリュー(長期)投資家も、頭の良い短期トレーダーも、当然いくらでもいる。

 しかし、割引率の高さ故に「頭が悪い」と表現されるタイプの人間が、短期トレードを続けていることはあっても、バリュー投資・長期投資を続けていることはほとんどないため、観測範囲によっては、そう表現してしまっても不自然に見えない状況はありうる。

 ……ということだと思われる。

ジェイソン・ツヴァイク『あなたのお金と投資脳の秘密―神経経済学入門』★★★★★

 過去書評。投資の役に立つかどうかという観点では、一般の行動経済学本以上のものではないかもしれない。しかし、とてもユニークな内容なので、独自の価値はあると思う。

ジェラルド・M・ローブ『投資を生き抜くための戦い』22 損をして得をとる

22 損をして得をとる

 損失を受け入れることは、資金の安全を確保するうえで最も重要な方策である。これはまた、投資家が知らん顔を決めこみ、実行したがらない行動である。
(中略)私が学んだほかの何にも増して重要なことは、損失を早く受け入れることこそ、成功への最初のカギだということだ。

 「損切りが難しいなどと言っているうちはシロウトです」という趣旨の台詞は、いい本では必ずと言っていいほど出てきますね。

 ある程度の元本割れに対して常に心の準備をしておかなくてはならず、それが現実になったときは利益から差し引いて、アカウントが実際に何を達成したのか正確に把握しなければならない
(中略)
 いったん下がったものは必ず上がると思うのは、大きな間違いだ。

 評価損を「実現損じゃないから大丈夫」と思って塩漬けにしてしまうのは、典型的なダメパターンです。私も経験済みです。

 人は杓子定規なルールなどではなく、自分の頭を使い、論理と理性でことにあたるベきだ。(中略)
 まず最初に、現実に損失が問われるすべてのケースで、投資額が10%減ったらまず十分に注意しろ、と言いたい。通常は、そこで損切りするベきだ。
 同じ株を、あとで買い直すことになるかもしれない。しかしいったん売却してしまえば、先入観を排除したまったく異なる心理状態でいられることに気づくはずだ。ひょっとするとあなたはそれを買い戻さず、別の株を買ったほうがいいと思うかもしれない。ポイントは、いかなる感情も介入させず、完全に冷静になって投資を見つめられるかどうかだ。ポジションから先入観を受けないほうが考えに集中できるので、10回のうち9回は、下がった株は売ってしまったほうがよい。

 私自身は投機的ポジションの機械的損切りの基準は-8%としていますが、-8%か-10%かの差は特に重要ではありません。自分の経験上は、一度機械的に損切りできるようになると、基準の上でも(条件によっては)下でも切れるようになります。

 買った株が元値の25、33あるいは50%まで減ってしまったとしよう。(中略)私としては、一部を売却することにするだろう。それがポジションの1/4になるか、1/3か、1/2までに至るか、それは分からない。だがとにかく一部を処分して、次に市場が買い気配になったときに、売った分を買い戻すかどうか検討すればよい。たぶんあなたは、買わないだろう。

 -10%で損切りできなかった場合の話。とにかく一部を売れとのこと。これはどちらかというと心理的なテクニックに属することかもしれません。全部一気に損切りできない人も、たとえ1/4でも売ってしまうと、一度やってしまったことですから、次も売りやすくなります。

 そして、損切りしたとき(手数料分だけの損を承知の上で)売った分をすぐ買い戻したくならないとしたら、今までポジションを持っていたのは、冷静な判断によるものではなくて、行動経済学でいう現状維持バイアスと保有効果に捕らわれていただけだということです。

 では、値上がりして大きな含み益を持った株はどうだろう? この章は、天井を見極めることではなく、「損」を取ることで利益が目減りしすぎるのを防ぐことがテーマである。私は損失のときと同じシステムを勧める。
 もし株価が相場の最高値から10%下がったら、部分的に処分することを考えたほうがいい。

 ここで言っているのは、自分の買値を市場が気にすることはないので、利の乗ったポジションだからといって損切りと違う基準を用いるのは合理的でない、ということでしょう。

 これに関しては、需給のみに基づく純粋な投機ポジションなのであれば、この基準をそのまま適用するのがよいと思います。

 ファンダメンタルズに基づく見通しがあるのであれば、利を伸ばしていくためには、文字通り実行しない方がいい場合も多いと思われます。不合理な心理会計であるからこそ、いわゆる「握力」を強めるのに利用できる、という側面もあるからです。

 自分の損失を監視して損切りできる人や、収益を把握して減少しそうなときには一部を処分できる人は、長い目で見ると一番成功する。

 初歩であると同時に奥が深い損切りテーマでした。

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