トマスの疑い深い資産運用

30代半ばの日本人男性兼業投資家。日々勉強中です。

行動経済

ウォルター・ミシェル『マシュマロ・テスト 成功する子、しない子』★★★★★

 なんかもう日常語レベルになっていて、知ってるつもりになっているマシュマロテストだが、改めて読んでみると面白い。

 教育の話としても、自制能力全般の話としても、投資の話としても(?)非常に有用。おすすめ。

美人投票+自信過剰=衆愚

 このエントリで一度書いたことですが、とてつもなく重要なことだと思うので、もう一度リライトして強調します。市場に関するほとんどあらゆる出来事に関わってくるほど重要なことです。

自信過剰バイアス

 まず前提として、精神的に健康で普通の人間は、常に自信過剰バイアスのかかった状態にあるとされています。つまり、ほとんど誰もが、自分は平均よりも優秀だと思っています。言い換えれば、誰もが周囲の人間は自分より馬鹿だと思っています。

 いわゆる鬱とは、この自信過剰バイアスが失われた状態なのではないか、とさえ考えられています。

 元々、何かがうまくいっていない時は自信過剰バイアスを外して冷静に考え直した方が適応的であるため、そのために用意された仕組みがあり、それが過剰に働いてしまっているのが、いわゆる鬱状態なのでしょう。

美人投票

 一方で、市場には元々ケインズの美人投票の要素があります。一般に、自分が良いと思うものではなく、周りの皆が良いと思うものを買わなければなりません。

 周りの皆の考えをそのまま知ることはできないので、実際には「周りの皆が良いと思うだろうと自分が思うもの」を買うことになります。

 当然、自分だけでなく周りの皆も同じことを考えています。そして自分は周りの皆にとっての周りの皆でもあるので、出力が入力に繋がって、正のフィードバックループが発生します。

 一般に、正のフィードバックは、他の要因によって制限されるまで止まらず、どこまでも行きます。

美人投票+自信過剰バイアス

 この2つが合わさると何が起きるでしょうか?

 ほとんど誰もが、周囲の人間は自分より馬鹿だと思っていて、かつ「周りの皆が良いと思うだろう」と自分が思うものを買い、その過程が正のフィードバックにかかると、どうなるでしょう? もうおわかりですね。

 ほとんど誰もが「考えうる限り一番の馬鹿が買うようなもの」を買うことになります。

 誰もが平均以上ということはありえず(参考: Lake Wobegon effect)皆が自分より馬鹿というのは事実ではありえませんが、美人投票の過程によって、それが結果的に事実になってしまうのです。

 普通の詐欺は被害者自身を騙せなければ成功しません。たまたま本当に馬鹿な被害者を騙すことに成功したとしても、捜査機関など一般に馬鹿ではない人まで騙し通すことができなければ、その利益を確定させることは困難です。

 しかし、証券市場における詐欺的行為は、普通の人が考える(想像上の)自分より馬鹿な人々を騙すことさえできればよいのです。

  • 自分は当然こんな与太には騙されないが、世間には騙される奴が沢山いるだろう。

 と思わせることができるレベルでさえあればよいのです。このハードルは当然、本人を騙すよりかなり低くなります。

 誰が見ても詐欺師同然の煽り屋が次々とイナゴタワーを形成できるのも、どう見てもいい加減なIPOがものすごいスッ高値で上場ゴールを決められるのも、本質的にはこの要素が関わっていると考えられます。

田渕直也『図解でわかる ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて』★★★★

 これまたyäsü(@yasuFX)氏のブログより。個人的には改めて得るものはなかったが、初心者から中級者向けの非常な良書という印象。「図解でわかる」と言うだけあって図が豊富。

梶井厚志『戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する』★★★

 yäsü(@yasuFX)氏のブログより。新書としてすごくバランスがよいと思う。Amazonで目次をざっと見て、内容が全部予測がついてしまう人以外は、読んでみて損はないはず。

デビッド・アロンソン『テクニカル分析の迷信――行動ファイナンスと統計学を活用した科学的アプローチ』★★★★★

 yäsü(@yasuFX)氏のブログで知ってkindleunlimitedでタダ読み。

 すごくよい本だと思う。特に最初の3章が「投資のための科学(的方法論)入門」として完璧に近い。

 それ以降の統計やテクニカル分析そのものは、システムトレードでもしようというのでなければ、個人で使う機会はまずないだろう。私もたぶん一生使わない。でも、最初の3章しか読まないとしても十分な価値あり。

 自分のバックグラウンドが自然科学系でよかったと思うのは、まさにこの本で注意されているような罠を、すべて丸ごとパスできているということだ。仮に試行錯誤の経験だけで突破しようとしたら何十年、あるいは一生を棒に振りかねない罠だ。

『「幸せをお金で買う」5つの授業 ―HAPPY MONEY』★★

「幸せをお金で買う」5つの授業 ―HAPPY MONEY

 エリザベス・ダン著、マイケル・ノートン著。個別には知ってる話ばかりだったが、まとめとしてはいいのでは。

『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』★★★★★

いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学

 センディル・ムッライナタン著、エルダー・ シャフィール著。ありがちな自己啓発本・ライフハック本と誤解されかねない邦題だが、副題の通り行動経済学本。

 非常に面白い。最近どれを読んでもややマンネリ気味だった行動経済学本だが、久々に本当に面白い。

 個々の知見はどこかの本で見たことがあるような気もするのだが、それらが合わさると、社会の貧困問題から個人の忙しさの問題まで、全ての問題が違って見えてくる。

  • トンネリング(≒近視眼)
  • ジャグリング(近視眼の悪循環)
  • スラック(不意の衝撃を吸収するための余裕・ゆとり)
  • 意思力は筋力と同じ(く使うと短期的には減り長期的には鍛えられる)

 あたりの概念は憶えておきたい。

 個人的には「規律ある生活」とでもいうべき一見陳腐な理念を改めて大切にしなければと思った。

参考リンク

パズドラに効いているバンドワゴン効果の考察

 Twitterで伝道師やGCN氏と話した時の内容を整理したもの。

 3度目の抜かれ以降、パズドラもだいぶ警戒してスケジュール合わせたり、おそらく予定になかった嵐CMなどでテコ入れして来ている。

 しかし、ベースの新規DL数が違うので水面下では差は詰まり続けていると思う。蓋をされている分、再度のモンスト一位が発生した時のインパクトは相対的に高まっているだろう。

 モンストが3月以降いろいろテコ入れされて、もはやパズドラが圧倒的に上回っていると言い切れる部分は「いま一位である」という部分しかない。(上回っている部分がないと言っているのではないことに注意。)

 これがたとえば何らかの魔法で一ヶ月間一位を受け渡すようなことがあれば雪崩現象が起きてそのまま逆転が固定してしまってもおかしくない。

 私がパズドラ側だとしても、それを警戒して、当分とにかく一位を渡さないようにして、

 これからも一位はずっとパズドラだぞ、すぐに廃れる他のゲームに移って課金なんかするなよ、もったいないぞ、どん判金ドブになるぞ。

 というメッセージをユーザに暗に伝えるだろう。

 ここまでの事情はモンスト側でも明らかなので、ゴジラコラボ、新イベント、1000万DL記念 etc. をバラけさせずに全部まとめて、とにかくまた一時でも一位奪取しようとしている。

 ……という状況だと勝手に思っている。

 ここでパズドラが一位であることそのものにかかっている効果の大きさが重要なので、もうちょっと詳しく考察する。

 先行者効果を甘く見ているわけではないが、目先どうあれ長期的にもパズドラを抜けないというケースはあまり考えていない。もちろん希望的観測かもしれないが。

 私の予想のベースはこちらの考察に近い。モンストが一位を取るというより、パズドラの一位がこれ以上続くことが考えにくいと思っている。

 当の運営自身がなぜヒットしたかわからないと度々発言しているように、パズドラの大ヒットはそれほど自然なものではなくて、かなりの偶然の要素に助けられた不自然なものだと思っている。

 それでも大ヒットできた最大の要因はもちろん、スマホゲームアプリ市場ができて最初のヒットだということだ。カンブリア爆発の時に、今から見ると不自然で効率が悪そうな生物でも繁栄できたのと同じことだ。

 モンストとパズドラの登場順序が逆だったらパズドラがモンストを抜くことはあまりありそうにない。(本当はモンストが後発なんだからそれで当然だが。)

 にも関わらず、現在パズドラが一気に抜き去られないのはなぜかというと、長く不動の一位だったことによって、いくつかのバイアスがかかっているからだろう。

サンクコストの誤謬

 ひとつはサンクコスト。すでにパズドラに金や時間をつぎ込んでいるから他に移ったら捨てることになるということ。

 ただし、これは経験上そんなに大きいものとは思えない。面白いとかつまらないとかいうのはそのようなものではない。

 自分はいわゆるソーシャルゲームはやってこなかったが、高い金出して買っちゃったソフトだから、つまらんけどもっと遊ぶかとか、もう飽きたゲームだけど、もう長い時間かけちゃったからまだやらなきゃ、とかいう行動は、あまりありそうにない。

 どちらかというと重課金・廃課金者に生じやすそうな効果であるし、動画配信者や攻略サイト運営者には重要であろうから、あまり軽視もしていないが、現在モンストとの比較で重要なのはこれではないと思う。

バンドワゴン効果

 もうひとつはもっと単純なバンドワゴン効果。勝ち馬に乗りたい、面白いゲームというより流行っているゲームを遊びたいということ。

 特に子供などは、学校や友人グループで流行っていないゲームに課金してしまうと小遣いをドブに捨てることになるので、これについては極めてシビアであると考えられる。

  • 不動の一位だから安心して課金される。 ↓
  • ↑課金されるから不動の一位である。

 パズドラの、旧来の常識では考えられない異常な長期政権は、この正のフィードバックループによるところが極めて大きいと思われる。(もちろんスマホアプリはアップデートし続けられる、等の既知の効果は当然として。)

  • 本来なら飽きてやめてるところだけど、他に安心して乗り換えられるゲームがないから、パズドラを続けている。
  • 本来なら別のゲームをやっているところだけど、周りで安定して遊ばれてるのがパズドラしかないから、パズドラをやっている。

 等の需要はかなり溜まっている(いた)ということだ。モンストが完全にパズドラを抜き去って一位に行こうとすれば、この効果を崩して逆に自分のものにしなければならない。不動の二位まで行ったことで部分的には成功しているだろうが。

 大事なのはこのフィードバックループを維持しているのはユーザーの予測・期待であるということだ。最近、経済のインフレ期待の話としてよく聞くだろうが、経済現象では期待が自己実現するということがある。

 たとえば、いま一位でないとしても近い将来一位になることが、魔法で確実にわかるとしたら、やはり安心して課金され、実際に一位になるということが起こりうる。

 つまりパズドラのフィードバックループが維持される条件は、単に「一位であり続けること」ではなく、「一位であり続けると予想されること」だ。後者が満たされなくなれば前者も満たされなくなる。

 初回の抜かれの時に、たまドラの時のコメントと対応とか、プロデューサーがライターに切れたりとか、いろいろ冷静に考えたらありえない対応になったのは、パズドラ運営もこのことを直感的にか、あるいは理性的にか、理解しているからだろう。

 一時的に抜かれようが売上的に大した意味はなくても、一時的にでも抜かれることは、将来抜かれるかもという期待を生じさせるからだ。ひとたびそれが臨界点を越えた場合、フィードバークループがはじけ飛んで逆回転を始めるのを恐れるからだ。

 モンスト側から見ればこのバイアスは良し悪しで、地力では勝っている(後発なんだから当然だが)としても、それだけではパズドラは抜けないということになる。しかし同時に、実際に地力で勝つところまで証明して見せなくても、勝てると思わせるだけでいいことにもなる。

 当面は、フィードバックループをはじけ飛ばせる針の一突きがほしいところである。というわけで最初に戻るが、各種イベントを分散させずに、一点集中しているのはそういうわけではないかと。

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