トマスの疑い深い資産運用

アラフォー日本人男性兼業投資家。日々勉強中です。

行動経済

いつの間にか商品の容量が減る問題と貨幣錯覚

 昔から定期的に沸くネタだが、どうも過去最大のブームのようなので記念に。広義の貨幣錯覚が与える影響を身近に感じられる良い例だと思う。

 ちなみに、この話の最古の記憶は、スティーヴン・ジェイ・グールドのエッセイ『ハーシーのチョコレートバーにおける系統的体小化』 。

 消費者の貨幣錯覚と損失回避的姿勢のおかげで、値上げはとても大きな反発を招く。

 そのためインフレに対抗するには、値段を据え置きにして量を縮小するしかない。

 徐々に縮小していくと、どこかで許容できない限度に到達するが、ただ値上げすることはできないので、値上げと巨大化をセットにすることで対応する。

 そのため多くの商品は「値段一定で徐々に縮小」と「値上げと同時に一気に巨大化」のパターンを繰り返すことになる。

『不道徳な見えざる手』★★

 ジョージ・A・アカロフ著、ロバート・J・シラー著。つまらなくはないが、期待ほどではない。

 詐欺とかペテンとか、人間の不完全さとか、モラルハザードとか、行動経済学とか好きな人には、そこまで目新しい内容ではないかも。

優待を使った富の世界間移転によるメンタルハック


 行動経済学でよく言われることだが、金銭を他の物品に変えてワンクッション挟むと、しばしば行動が変化する。(会社の金庫から金を盗まない人も同じ金額の備品は盗む、ギフトには現金より金券が好まれる、等々。)

 これは詰まるところ、金銭≒数字は進化的に新しすぎて、意識して抽象的な思考を駆使しなければ扱えない、ということに起因すると思われ、根本的には一朝一夕でどうにかなるものではない。

 私は、数年前から、純投資理論的にはほとんど意味のない三倍優待口座や優待クロスを、割としっかりやるようにしているが、この容易に変えられない事実を逆手に取った心理的テクニックとしてやっている面が大きい。

 で以前詳しく書いたように、投資世界と日常世界を別のものとして、それぞれの世界でのお金を同じであって同じでないと考える二重思考が、パフォーマンス上重要である。

 同時に、投資世界である程度お金が増えたら、多少は日常生活も豊かにしたいところである。でないと、そもそも何のために投資をしているのかわからなくなってしまう。

 しかし、単に出金すると、それはお金であってお金でないという、必死で保っている幻想を、ダイレクトに破壊する効果をもたらしてしまう。どうしたらいいだろう?

 そこで挟むワンクッションが優待だ。投資世界では、あくまで株の長期投資であると考え(クロスはともかく三倍優待の方は本当にそうだ)、日常世界では(お金を引き出しているのではなく)あくまで関係先から季節のギフトが届くだけと考える。

 これによって、投資メンタルも日常メンタルも狂わせずに、二重思考を保ったまま、安全に少しずつ、投資世界から日常世界に富を移転することができるのだ。

 なお、最近投資クラスタで盛んになりつつある優待警察に対するアリバイを提出しておくと、クロスはもちろん優待制度についても、以前から全否定派である。

『実践 行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択』★★★

 リチャード・セイラー著、キャス・サンスティーン著。ノーベル賞にかこつけて過去書評。行動経済学自体についてはさほど目新しくはないが、それを社会制度にどう応用するかに重点が置かれている。

 ナッジ(nudge)という概念はライフハック的にも役に立ちそう。憶えておきたい。大雑把に言えば、長期的に考えて望ましい選択肢を自ら選ばせるための後押し、といったところか。

ダン・アリエリー『不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」』★★★

 過去書評。『予想どおりに不合理』を読んで面白かったら、これも。

ダン・アリエリー 『ずる 嘘とごまかしの行動経済学』★★★

 過去書評。これもアリエリーの行動経済学本。タイトル通り(ちょっとした)不正にスポットが当たっており、実用的で面白い。他人の不正を防ぐというのもあるが、何より自分自身をモニターする意味で。

ダン・アリエリー『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』★★★★★

 過去書評。行動経済学本。この人の本はどれも水準以上で面白いが、最初の一冊あるいは一冊だけ、という条件ならまずこれを薦める。

 もしかしたら投資にも役立つかも知れないし、自分の日常生活や消費行動も変わるかも知れない。

バリュー投資家は「頭がいい」のか?

 要約すると「バリュー投資家は頭がいい」ということが言われることがある。「バリュー投資家」の代わりに「長期投資家」が入ることもある。

 事実上「短期トレーダーは頭が悪い」と言っているも同然なので、炎上とまで言わなくても論争になりがちである。

 私の意見では、この主張そのものは間違いであるが、そう言ってしまいがちになる背景となる事実はあり、それを特定することによって、無意味な論争を避けることができると思う。

 行動経済学で双曲割引という概念がある。ここで詳しく説明はしないが、時間による割引率が、高い≒近視眼的・低い≒長期的と考れば、大きな間違いはないだろう。

 そして、

  1. 時間割引率の極めて高いバリュー・長期投資家はまずいない。
  2. 時間割引率の極めて高い人間は、日常的に使われる概念では、単に「頭が悪い」と表現されることが多い。

 の2点までは、定義そのものから言っても、事実としても、現実に成り立っている関係だと思われる。

 つまり、単純に「長期投資家は頭がいい」とか「短期トレーダーは頭が悪い」と言ったら間違いである。頭の悪いバリュー(長期)投資家も、頭の良い短期トレーダーも、当然いくらでもいる。

 しかし、割引率の高さ故に「頭が悪い」と表現されるタイプの人間が、短期トレードを続けていることはあっても、バリュー投資・長期投資を続けていることはほとんどないため、観測範囲によっては、そう表現してしまっても不自然に見えない状況はありうる。

 ……ということだと思われる。

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