トマスの疑い深い資産運用

30代半ばの日本人男性兼業投資家。日々勉強中です。

市場

美人投票+自信過剰=衆愚

 このエントリで一度書いたことですが、とてつもなく重要なことだと思うので、もう一度リライトして強調します。市場に関するほとんどあらゆる出来事に関わってくるほど重要なことです。

自信過剰バイアス

 まず前提として、精神的に健康で普通の人間は、常に自信過剰バイアスのかかった状態にあるとされています。つまり、ほとんど誰もが、自分は平均よりも優秀だと思っています。言い換えれば、誰もが周囲の人間は自分より馬鹿だと思っています。

 いわゆる鬱とは、この自信過剰バイアスが失われた状態なのではないか、とさえ考えられています。

 元々、何かがうまくいっていない時は自信過剰バイアスを外して冷静に考え直した方が適応的であるため、そのために用意された仕組みがあり、それが過剰に働いてしまっているのが、いわゆる鬱状態なのでしょう。

美人投票

 一方で、市場には元々ケインズの美人投票の要素があります。一般に、自分が良いと思うものではなく、周りの皆が良いと思うものを買わなければなりません。

 周りの皆の考えをそのまま知ることはできないので、実際には「周りの皆が良いと思うだろうと自分が思うもの」を買うことになります。

 当然、自分だけでなく周りの皆も同じことを考えています。そして自分は周りの皆にとっての周りの皆でもあるので、出力が入力に繋がって、正のフィードバックループが発生します。

 一般に、正のフィードバックは、他の要因によって制限されるまで止まらず、どこまでも行きます。

美人投票+自信過剰バイアス

 この2つが合わさると何が起きるでしょうか?

 ほとんど誰もが、周囲の人間は自分より馬鹿だと思っていて、かつ「周りの皆が良いと思うだろう」と自分が思うものを買い、その過程が正のフィードバックにかかると、どうなるでしょう? もうおわかりですね。

 ほとんど誰もが「考えうる限り一番の馬鹿が買うようなもの」を買うことになります。

 誰もが平均以上ということはありえず(参考: Lake Wobegon effect)皆が自分より馬鹿というのは事実ではありえませんが、美人投票の過程によって、それが結果的に事実になってしまうのです。

 普通の詐欺は被害者自身を騙せなければ成功しません。たまたま本当に馬鹿な被害者を騙すことに成功したとしても、捜査機関など一般に馬鹿ではない人まで騙し通すことができなければ、その利益を確定させることは困難です。

 しかし、証券市場における詐欺的行為は、普通の人が考える(想像上の)自分より馬鹿な人々を騙すことさえできればよいのです。

  • 自分は当然こんな与太には騙されないが、世間には騙される奴が沢山いるだろう。

 と思わせることができるレベルでさえあればよいのです。このハードルは当然、本人を騙すよりかなり低くなります。

 誰が見ても詐欺師同然の煽り屋が次々とイナゴタワーを形成できるのも、どう見てもいい加減なIPOがものすごいスッ高値で上場ゴールを決められるのも、本質的にはこの要素が関わっていると考えられます。

川北英隆『「市場」ではなく「企業」を買う株式投資』★★

「市場」ではなく「企業」を買う株式投資

 これもさっかく氏のブログ経由。

 視点・内容ともに良いと思うが、兼業個人の私の役にはあまり立たないと思うので、ざっとで済ます。

マイクタイソンと殴りあって勝つには

 何の因果か、あなたは全盛期のマイクタイソンと殴りあって勝たなければいけない羽目になったとしよう。以下のどちらを選ぶべきか。

  • リング上で15ラウンドのボクシングの試合を挑む
  • 期限も場所も定めずルール無用の勝負を挑む

 これだけの想像でも、普通の個人が市場平均を上回る投資成績をあげようと思ったら、FXや指数先物の短期投資より、個別株の長期投資を選ぶべきである理由が、何となくわかるのではないだろうか。

 要点は、時間やルールの制約が増えると、元から実力の劣る側は、ますます不利になるということだ。

 テニスのマッチ・セット・ゲームの仕組みなどが典型的だが、スポーツのルールは、真の実力のわずかな差を増幅するようにできている。

 短期の繰り返しを積み重ねるやり方は、実力の劣る側に不利だ。コツコツコツコツでずっと勝てるならば、それに越したことはないが、それができるならすでにプロだ。

 投資における一般個人のように、実力のはっきり劣る側は、いわゆるコツコツドカンのドカンを勝ちの方にして勝ち逃げするしか、基本戦略はありえないと思う。

 その意味でハイレバで短期のFXはあらゆる側面から最悪の投資だと思う。なぜ個人でやりたがる人が一定数出るのか、まったくわからない。

 テニスで言えば、自分側だけコートの中央何割かしか地面がなく、両側が断崖絶壁の状態で、ウィンブルドン優勝者に試合を申し込むのと変わらないはずだ。プロ同士でもそんな条件で勝てるわけがないのに。

相場で少数派が有利な理由についての考察


 このツイートを見て考えた。相場における格言として、多数派に付和雷同してはいけないとか、コントラリアン(天邪鬼)になれ、とかいうようなものがよく見られるがその理論的論拠について。

 まず極限まで簡単な思考実験。コイントスに賭ける市場を考えよう。表裏が出る確率は正確に1/2。超能力もイカサマもなし。単純に外した側の金を当てた側が取る。表裏どちらに賭けるべきか?

 「賭けている人が少ない側」だ。それ以外の答えはありえない。少数派というだけで有利なのだ。

 多少条件が複雑になっていっても本質は変わらない。確率が不平等だったりリスクリワード比が異なっていたとしても、それに応じて参加者が行動を変えるはずなので、それを加味した上で常に「少なすぎる側」に賭けることが有利だ。

 もうひとつ重要な要素は、相場での多数は線形にしか効かないということだろう。100株の買い(または売り)が2人いても、合わせて200株でしかない。当然のように聞こえるが、他の人間の活動の大半においては、そのような数字通りにはなっていない。

 たとえば1対2の殴り合いのケンカなら、多数派の有利さは2倍どころではない。少数派は普通はまず勝てない。人間の多数派に属したがる本能は、このような場合を基準にできているはずだ。

 従って、市場では、本能的に心地よい程度に付和雷同していると、我慢して冷静に計算して少数派に属そうと心がけるコントラリアンに、必ず負けることになる。

 もちろんこれは統計的・長期的・大局的な話で、絶対ではない。美人投票・正のフィードバック・単なるブレによって成り立たない場合もあるだろう。

マーク・ダグラス『ゾーン ― 相場心理学入門』★★★

ゾーン ? 相場心理学入門

 評判が高かったので読んだ。内容的には良いと思うが、そこまですごいとは思えなかった。

 市場の短期的な動きは単にランダム。市場を擬人化して何かしらの感情を持ったり、個々のトレードの結果に一喜一憂したりするのは有害無益。トータルで勝ち越せる戦略があり、リスク管理ができていれば、後は淡々と実行すればいい。

 という内容を、いろいろ表現を変えつつ繰り返しているだけのように見える。初心者の頃に読んでいれば、もうちょっと役に立ったと思う。

うぬぼれ+美人投票=衆愚

 精神的に健全で標準的な人間は、やや自信過剰バイアスのかかった状態にあるとされています。

 つまり自分は平均よりも優秀だと、言い換えれば、周りには常に自分より馬鹿なやつが多いと考えています。

 そして、市場にはケインズの美人投票の要素があり、自分ではなく他の大多数がどうするかに基づいて結果が決まります。

 このふたつが合わさると、実際には市場に馬鹿がひとりもいなくても、全員が馬鹿のように行動することがありえます。

先が見えすぎて有害な場合がある

雇用、利子、お金の一般理論 (講談社学術文庫)

 ミクシィ投資から得た教訓その2です。これも初めて認識したというわけではないですが、実感したのは初めてです。

 現在ミクシィ株は、去年12月の高値約9000(分割前)の約2倍の値がついています。去年の最高値で買った人は、半年先の未来を見抜くという意味では、実に正しい投資行動を取ったことになります。

 しかし実際には、この値段を回復したのは今年5月になってからのことで、それまでには、何度も4000台(分割前)まで売り込まれました。私自身、損切りに次ぐ損切りで、NISA枠の100株を除いてノーポジになった場面が、1月頃にありました。

 又聞きの又聞きぐらいでしか知りませんが、去年の高値を買ってその先の下げで退場した人も実際にいるはずです。そのような人は、結果的にモンストの可能性など正しく理解できない方が良かったことになります。

 市場のコンセンサスが間違っている時に正しい少数意見につくことができれば、いわゆる逆張り投資の成功となり、普通は儲かります。しかし、それが極端になりすぎて、周囲がみんな間違っている時にひとりだけ正しいと殺されてしまうわけです。いわゆる魔女狩りの論理と同じです。

 これは市場の持つ性質のうち、最も理不尽に感じられるもののひとつだと思いますが、市場にケインズの美人投票の要素がある限り、どうしようもないことでしょう。抜本的な対策は思いつきません。

 ただ、相手のあることだから自分だけが正しくてもだめ、とやや広く捉えれば、投資のみならず人間関係の基本とも言えます。このことを常に認識して、どんなに自信があっても、自分の予想よりはやや謙虚に行くことを心がけるしかないと思われます。

踏み上げが起こる原理

 自分にとって目先これが重要な場面のようなので、この機会に一度「踏み上げ」についての自分の理解をまとめます。なにか間違っていたら教えて下さい。

通常売買

 まず普通の売買では、買いと売りは対称的です。買い手は現金を払い株を受け取り、売り手は株を渡し現金を受け取ります。分かりやすいです。

取引前の状態

主体 所有 将来
A:買い手 現金 買うかも
B:売り手 売るかも

取引後の状態

主体 所有 将来
A 売るかも(新売り手)
B 現金 買うかも(新買い手)

 取り引きの前後で、株を買った人は、今度は売る可能性のある人になり、売って現金を受け取った人は、今度は買う可能性のある人になります。完全に対称的です。

信用買

 信用買いは比較的わかりやすいです。親戚やサラ金からお金を借りて、それで株を買うのと、本質的には何も変わりません。お金を借りる相手が証券会社であるだけです。

 一定期間後にお金を返す必要が生じますので、もちろん潜在的な売り圧力にはなりますが、その効果は確実ではありません。

 お金を返す方法はその株を売るだけではありません。他の株を売るとか土地や車を売るとか、さらなる借金を重ねるとか、いくらでも方法がありうるからです。

信用売

 難しいのは空売り(信用売り)です。これには買い手、売り手だけでなく、もうひとつ主体が必要です。

 何らかの理由、たとえば大株主で普通には売れないなどで、当面その株を手放さないと決まっていて、誰かにその株を貸す主体です。

取引前の状態

主体 所有 将来
A:買い手 現金 買うかも
B:空売り手
C:株貸し手 売らない

CからBに貸し株した状態

主体 所有 将来 備考
A 現金 買うかも
B 売るかも 一定期間後に株を返す義務
C 売らない(売れない) 一定期間後に株を返してもらう権利

取引後の状態

主体 所有 将来 備考
A 売るかも
B 現金 買わなければならない 一定期間後に株を返す義務
C 売らない(売れない) 一定期間後に株を返してもらう権利

 Cはもともと当面株を売る気がなかった安定株主ですから、貸してしまって売れなくなっても売り圧力は変化なしです。

 Aは新たに株を得たので売る可能性がある人がひとり増えました。これは通常の売買と同じです。

 唯一違うのはBです。Bは現金を得たので次に買う可能性がある人になりました。ここまでは通常の売買と同じです。しかし、Bには一定期間後に株を返す義務が残っています。

 対してAには将来売る義務がありません。つまり空売りは、売る義務を発生させず、買う義務だけを発生させるのです。株や現金を増減させるわけではない(魔法ではないので当たり前ですが)のに、買い圧力だけが増します。この非対称が踏み上げの本質です。

踏み上げ

 そして、株を返すのはお金を返すのとは少しわけが違います。「お金がない」という状態は普通に存在しますが、それは誰もが(タダでは)他人に渡したくないと思っているからで、どこを探しても日本円が見つからず、なにを犠牲にしても日本円が得られないということは起こりえません。

 しかし、株は違います。ある時点のある株の総数は決まっており、ほぼ株式市場でしか買えないので、市場参加者が誰も売りたくないと思えば、どこを探してもその株が見つからず、なにを犠牲にしてもその株が得られないということが起こりえます。

 空売りが増え、かつ市場参加者が誰も売りたくないと思うような状況が発生すれば、どれほど高くても買わなければいけないのにそれでも買えないという主体が増え、ますます値がつり上がり、そのためますます誰も売りたくなくなる、という正のフィードバックが生じます。

 正のフィードバックは他の要因によって制限されるまで止まらないので、普通ならありえないような高値までつり上がってしまうことになります。これが踏み上げです。

30代日本人男性兼業個人投資家。日々勉強中です。
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