トマスの疑い深い資産運用

30代半ばの日本人男性兼業投資家。日々勉強中です。

投資哲学

つなぎ売りにはいくつか効用があるかもしれない

 最近6200 インソースで、いわゆるつなぎ売りというものを試している。基本的に長期上目線だが、短期の動きでも利益を得ようとしたものだ。もっとも、ここ最近の上昇で収支はマイナスであるが。

 つなぎ売りには従来懐疑的だったが、実際やってみて、不合理であるが故の心理的利点があるような気がしてきた。こちらの記事に共感するところが多い。

 手数料・金利・税金などの細かいことはいったん忘れるとすれば、いくらかつなぎ売りをしたところで、買い・売りを相殺したネットのポジションを持っているのと、何も変わらないはずだ。

 しかし、たとえ片方のウェイトはわずかでも、双方のポジションを持っているというだけで、バイアスの大半が除かれて、損が出る方に動いたときのストレスもかなり軽減される気がするのだ。

 また、プロスペクト理論でいう価値関数の、ある程度の含み益(損)になってしまうと、わずかな差が気にならなくなってしまう傾向も、かなり軽減される気がする。

 おそらく、常にそこからどちらかにポジションを取る可能性を考えるようになるからだろう。結果的に自分の買値(売値)に捕らわれにくくなるような気がする。

 2014年の2121 ミクシィの時は、現物を利確する誘惑に対抗するため、現物ポジションに加えて少量の信用買を常に持ち続ける方針を取っていた。効果は実際あったと思う。

 長期のつもりで持ち続けているだけだと、つい短期の動きでも取れるような気がしてきてしまい、売買の誘惑を押さえるのに苦労するが、実際に少額でポジションを取ると、すぐに損失として現実を突きつけられ、かえってメインの玉をうかつな売買から守ることができる。

 しかし、その目的で持つならば、信用買いよりも信用売り(つなぎ売り)の方が、全体のボラティリティを軽減する傾向がある分、わずかに良かったと思われる。もっともあの当初のミクシィは貸借銘柄になってなかったと記憶しているが。

衝突断面積を広げる

 この記事でオレオレ用語の「衝突断面積」というのを説明なしで使ってしまっているのに気づいたので、順序が前後するが補足する。

 元々は物理学用語で、一般でも通じる用語で「アンテナを張る」と言う場合の「アンテナの広さ」という意味で使っている。本当の意味が気になる人は自分で調べてほしい。

 「アンテナを張る」と言うと、どうしても受信するという受動的なニュアンスが出てしまう上に、最終的にひとつの結果が重要だということや、確率の問題だという部分が、上手く表現できない。

 「衝突断面積(を広げる)」と言う場合、確率の連続的な大小の問題であり、ひとつの良い情報に巡り会うために自分自身も動いているというニュアンスが自然に出るのが気に入っている。

美人投票+自信過剰=衆愚

 このエントリで一度書いたことですが、とてつもなく重要なことだと思うので、もう一度リライトして強調します。市場に関するほとんどあらゆる出来事に関わってくるほど重要なことです。

自信過剰バイアス

 まず前提として、精神的に健康で普通の人間は、常に自信過剰バイアスのかかった状態にあるとされています。つまり、ほとんど誰もが、自分は平均よりも優秀だと思っています。言い換えれば、誰もが周囲の人間は自分より馬鹿だと思っています。

 いわゆる鬱とは、この自信過剰バイアスが失われた状態なのではないか、とさえ考えられています。

 元々、何かがうまくいっていない時は自信過剰バイアスを外して冷静に考え直した方が適応的であるため、そのために用意された仕組みがあり、それが過剰に働いてしまっているのが、いわゆる鬱状態なのでしょう。

美人投票

 一方で、市場には元々ケインズの美人投票の要素があります。一般に、自分が良いと思うものではなく、周りの皆が良いと思うものを買わなければなりません。

 周りの皆の考えをそのまま知ることはできないので、実際には「周りの皆が良いと思うだろうと自分が思うもの」を買うことになります。

 当然、自分だけでなく周りの皆も同じことを考えています。そして自分は周りの皆にとっての周りの皆でもあるので、出力が入力に繋がって、正のフィードバックループが発生します。

 一般に、正のフィードバックは、他の要因によって制限されるまで止まらず、どこまでも行きます。

美人投票+自信過剰バイアス

 この2つが合わさると何が起きるでしょうか?

 ほとんど誰もが、周囲の人間は自分より馬鹿だと思っていて、かつ「周りの皆が良いと思うだろう」と自分が思うものを買い、その過程が正のフィードバックにかかると、どうなるでしょう? もうおわかりですね。

 ほとんど誰もが「考えうる限り一番の馬鹿が買うようなもの」を買うことになります。

 誰もが平均以上ということはありえず(参考: Lake Wobegon effect)皆が自分より馬鹿というのは事実ではありえませんが、美人投票の過程によって、それが結果的に事実になってしまうのです。

 普通の詐欺は被害者自身を騙せなければ成功しません。たまたま本当に馬鹿な被害者を騙すことに成功したとしても、捜査機関など一般に馬鹿ではない人まで騙し通すことができなければ、その利益を確定させることは困難です。

 しかし、証券市場における詐欺的行為は、普通の人が考える(想像上の)自分より馬鹿な人々を騙すことさえできればよいのです。

  • 自分は当然こんな与太には騙されないが、世間には騙される奴が沢山いるだろう。

 と思わせることができるレベルでさえあればよいのです。このハードルは当然、本人を騙すよりかなり低くなります。

 誰が見ても詐欺師同然の煽り屋が次々とイナゴタワーを形成できるのも、どう見てもいい加減なIPOがものすごいスッ高値で上場ゴールを決められるのも、本質的にはこの要素が関わっていると考えられます。

自我・我慢・慢心

 誰のこととは言いませんが、例の新婚さんとか、バフェットのアイコンで政治関係の発言ばかりしている人を見て思うことがあります。

 「自分の核」とでも言うべきもの、たとえば、

  • 人類70億人の全てが反対しても私はそう思う!
  • たとえこの世の誰一人認めてくれなくても私は私だ!

 というような、確固とした自我・自信を持たないのは、投資家として弱点だということです。

 一見、年寄りくさい曖昧な精神論に聞こえると思います。自分も長くそう思ってきましたが、アラフォーに近づいて少し意見が変わってきました。そうなるメカニズムもかなり説明がつくと思えます。

 一言で言えば、

  • 自分の核を持たないと、他人に振り回されっぱなしになり、我慢が効かなくなる

 ということです。「株の儲けは我慢料」と言われるように、投資において我慢が必要な場面は極めて多いのに、それができなくなるのです。

 たとえば、自分に自信がないから、失敗を認めることができずに損切りが遅れる人がいたとします。

 そんな人は、家族に知れたら自分がどう思われるかが心配で(ルール1を忘れた状態)損失を隠して放置し、結果的にさらに損失を膨らませてしまいます。

 たとえば、確固たる自我がないから、有名人の顔を借りて周囲に受ける発言ばかりしているうちに、正のフィードバックでどんどん過激化してしまう人がいたとします。

 そんな人が、投資の世界では、なぜか熱狂を逃れて冷静に少数派に属し続ける努力ができる、と考えるのは難しいでしょう。

 ……現実にもありそうな話ではないでしょうか。

 面白いのは、現在「忍耐」とほぼ同じ意味で使われる「我慢」の語は、元々「慢心」の意味だったのですね。言うまでもなく、慢心は投資の最大の敵とされています。

  1. 投資は我慢が大事
  2. 我慢は一種の慢心
  3. 慢心は投資の大敵

 さて、どうしたらいいのでしょう? 簡単な答えはなさそうです。

アスペ気味の方が投資に有利か?

 これらの記事を書いていたら思い出した。

 の直後に書く予定だった話を再開。


 もう1年以上前になるが、Twitterの投資家TLでアスペルガー診断がちょっとした流行を見せた。その際

  • 「若干のアスペ傾向は投資にはむしろ有利」

 という言説が、いくつか観察された。本当だろうか?

(ちなみに、この記事では本当のアスペルガー症候群にはあまり興味がない。ネットスラングレベルの話と思っていただきたい。)

 結論から言うと、バイアスのせいで広まっている単なるデマの類ではなく、一定の根拠があると思われる。ただし、重要な留保条件があるので注意を要する。丸ごと信じてしまうと、むしろ有害にすらなりうると思う。

 生命・脳・機械・コンピュータといった複雑なものは、専門化した部分の組み合わせが高度に制御されてできている。というより、それが複雑であることの実際的な定義だ。

 定義そのものからいって、専門化した部品は、その専門分野について、他の部品より優れている。当然、全体(の平均)よりも優れている。でなければ専門化の意味はなく、そもそもその部品は存在していないだろう。

 別に難しい話ではない。CPUの計算能力がパソコン全体より劣るとか、メモリの記憶容量がスマホ全体より小さいとかいうことがありうるだろうか。そんなわけはない。

 制御に欠陥が生じたとき、何かの能力が増す(ことがあるように見える)というのは、直感には反しても、ありうるどころか、複雑かつ高度なシステムには必然的に生じる性質なのだ。

 そして、投資能力は、少なくとも市場平均を上回れるようなそれは、明らかに単純でない。コンピュータのように部品を眼に見ることができないだけで、多くの専門化した要素の組み合わせでできている。

 ネットスラング的に言われている「アスペ傾向」は、特定の分野へ非常に熱心に取り組み、優秀である、という程度の意味であろう。

 制御の部分に欠陥がないのであれば、それは単に特定分野で優秀な人である。制御の部分に欠陥があるのであれば、それは単に特定分野が優秀な代わりに、他の部分に(ひいては全体に)リスクを抱えた人である。

 まとめると、

  • 「若干のアスペ傾向は投資にはむしろ有利」

 という言説は、

  • 「なんらかの意味で特化しなければ、(とりわけ個人投資家が)優位性を獲得し、市場平均に勝つのは難しい」

 という意味合いであれば、一定の価値があると思う。しかし、

  • 「勝っている人は何か神秘的な能力を持っている」

 とか、

  • 「何か特定の能力(だけ)を身につければ勝てる」

 というような解釈がされるのであれば、危険であろうと思う。

『歎異抄』に学ぶパクリ投資の掟

 ここでパクリ投資の話をしていたら、なぜか『歎異抄』のこの部分が頭に浮かんできた。

念仏は、まことに浄土に生まるるたねにてやはんべるらん、また地獄に堕つる業にてやはんべるらん、総じてもって存知せざるなり。たとい法然聖人にすかされまいらせて、念仏して地獄に堕ちたりとも、さらに後悔すべからず候。
そのゆえは、自余の行を励みて仏になるべかりける身が、念仏を申して地獄にも堕ちて候わばこそ、「すかされたてまつりて」という後悔も候わめ。いずれの行も及び難き身なれば、とても地獄は一定すみかぞかし。

 要するに、

  • 自分に判断できる力がないのだから損するのは当たり前だ
  • だからこの人に騙されて損しても後悔はしない

 という気になれるなら、パクリ投資もひとつの道として「あり」なのかなと。

 もっと縮めて一言にすれば「(パクリといえども)投資は自己責任で」ってことで。

私のエクセルは私より賢い

 何の本で読んだが忘れたが、アインシュタインは"My pencil and I are smarter than I am"(私の鉛筆と私は私より賢い)と言ったそうな。信頼できるソースは見つからないので、とりあえず俗説だと思っておいた方がよさそうだが。

 私はエクセルに楽天RSSと自作プログラムを組み合わせて、各種データ表示・バリュー計算・集計などを行うツールを作っているが、最近少しそれを更新するのを怠っていた。

 久しぶりにこのエクセルを開いたとき、すぐわかった。このツールをつねに開くようにしていたら、最近した失敗のひとつは簡単に避けられたはずだ、ということが。その失敗自体は、ここで書くほどたいしたことではないにしてもだ。

 最近気合いを入れ直したつもりだったが、やはりまだまだ怠惰だった。反省した。このツールは私の数少ない優位性だと思うので、ちゃんとメンテするようにしよう。

桃鉄とカレンダー計算

 「それはあなた、時間をかけないからですよ」のついでに、時間をかけることについての話。

 私は以前、XBRLを読んでバリュー計算をするソフトを作った。XBRLの仕様変更が思ったより頻繁かつ脈絡がないため、徐々について行けなくなってしまい、結局ほとんど何の役にも立っていない。

 しかし、少なくともバランスシートの見方だけはわかるようになった。(読めるようになった、ではない。残念ながら。)プログラムを作るために長時間バランスシートとにらめっこしてその意味を考えなければいけなかったからである。

 よく桃鉄のおかげで日本の地理が簡単に憶えられた」というような言い方がされる。日常語として間違っているとまでは言えないが、ここではおそらく、かけた時間が計算に入っていない。

 正確には「桃鉄のおかげで、すごく非効率にだが、膨大な時間をかけて、地理を憶えられた」と考えるべきだろう。

 桃鉄が担っているのは、地理にそれだけの時間をかけるモチベーションを提供することだけで、もし、同じだけの時間を桃鉄でなく勉強にかけることができるのであれば、もっともっと地理に詳しくなれるに決まっているのだ。

 何の本で読んだか忘れたが、イディオサヴァンの代表例のようなイメージになっているカレンダー計算能力は、普通の人間も一生懸命訓練すれば、普通に身につけることができるらしい。

 面白くないことだが、おそらく真の教訓は「神秘的な能力を持つ特殊な人間がいる」ということではなく「普通の知能を持つ人間は、調べればすぐわかるようなことに膨大な時間をかけたりしない」ということなのだろう。

2017/01/23追記

 ちょっとググったら今の目的には十分な信頼がありそうなソースを見つけた。

30代日本人男性兼業個人投資家。日々勉強中です。
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