戦争とニセ科学には逆相関があるかもしれない

 人間がいわゆる「科学的」思考が苦手だということは、繰り返し立証されている。進化環境で生き残るのに科学的思考はそんなに役に立たず、(科学的でない人間を相手の)政治の方が大事だったからであろう。

 にも関わらず、今日科学が重要視されるのは、科学技術が経済競争と戦争の勝敗に直結するものだったからだろう。

 すると、戦争や軍事的脅威の顕著な減少は、相対的に科学の軽視を招くのではないだろうか。経済における科学技術の重要性が全く減っていないので、その影響は決定的にはなっていないにしてもだ。

 かつてアメリカが理科教育に力を入れた背景には、宇宙開発(≒核ミサイル開発競争)でソ連に負けるのではないかという恐怖があった。

 常にアラブに負けたら国家消滅という恐怖があるイスラエルは、宗教勢力がとても強いにも関わらず、科学教育は非常に優秀な国だ。

 うろ覚えだが、オカルト的で有名だったナチスドイツもアトランティスとか電気人間とか信じてた極端なオカルトは弾圧したらしい。

(当たり前だが、別にナチスを評価しているわけじゃなく、極端な電波は現実世界で何をするにも邪魔で、ナチスといえども戦争には勝ちたかった、と言っているだけだ。)

 逆に言えば、戦争や国家間経済競争がないか厳しくない環境、石器時代同様非科学的な人間の投票や購買で結果が決まるような平和で民主的な時代には、非科学的でも構わないか、かえって有利にもなりかねない。

 これは昨今のフェイクニュース問題の根本にあるもののひとつではなかろうか。ここ20年ばかりの日米はかつてないほど、この状況に当てはまっていたように思われる。

 冷戦終結以降、中国やロシアがいくら何をどうこうしても、アメリカは経済・軍事的に圧倒的に強すぎた。過去形ではなく、現在ですらまだ十分にそうだ。

 なんらかの歴史のifで、現在中国が、かつてのソ連並みにアメリカとガチで世界を二分する力を持っていたらどうだったか。現在イスラム世界が巨大な統一政体で、ヨーロッパに侵攻することが可能な力を持っていたらどうだったか。

 アメリカやEUや日本で、これほどフェイクニュースやニセ科学的風潮が放置されえただろうか。たぶんされなかったのではないだろうか。

 敵国からの天然痘テロや炭疽菌ミサイルの可能性が、たとえ0.1%でも現実的にありうる状況であれば、EM菌信者やワクチン反対運動活動家は、おそらく投獄されるのではないだろうか。それがいいことかという議論は別として。

 EUやアメリカはロシアの脅威に気づいてフェイクニュースの取り締まりを強化してたりするし、日本も中国の軍事圧力の高まりに伴い、オカルト・非科学天国の状態は放置されなくなっていくのではないか。それが前より幸せかどうかはやはり別として。

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