ブロックチェーンの本質は「非集権にも関わらず改竄不能の情報」

 ブロックチェーンの肝は、非中央集権どころか、(計算力ベースで50%未満であれば)悪意を持った者が大量に入っていてすら、改竄不可能で一貫した一連の情報が保てるということ。これに尽きる。すべてはそこからの派生である。

 すべての記録が改竄不可というところから、送受信はできるのにコピーができない電子的なモノ、という一見従来の直感に反することが実現可能になる。

 過去の全ての記録が絶対に正しいと魔法で保証されるなら、ある人が1トークン受信したという記録は(また送信したという記録が追加されるまで)その人が持っている1トークンに他ならない。

 すると、そのトークンをお金と見なして扱っても問題は起きないことになる。現実の一万円札が「日本銀行はこの紙を持つ人に一万円分の信用を送ります」と記録された改竄不能(法律と印刷技術により)でコピー不能(物理法則により)なトークンであるのと同じだ。

 それが要するにビットコイン。現在のほとんどの暗号通貨は技術的な細部は違っても、ほぼどれも同じだ。改竄・コピー不能を担保するものを、法律と物理法則から、計算力と暗号理論に置き換えたのがブロックチェーンだ。

 ビットコインは、ほぼ2重使用を封じるためだけにブロックチェーンを使っているのであって、ブロックチェーンそのものと通貨は、必ずしも関係がない。非集権で改竄不能の情報、という本質の方が、遥かに可能性が大きい。

 たとえば、不動産の登記はなんのためにあるのだろう? 土地が誰のものかという重要情報を改竄されずに保つためだ。記録すること自体は難しくない。それに関わる役所や行政書士といった人間は、ほぼ改竄を防ぐためだけに存在し、給料をもらっていると言ってよい。

 銀行だってそうだ。銀行システムにものすごいコストがかかり、銀行員の給料がよいのは、なぜか? お金の勘定や保管がものすごく困難な作業だからじゃない。エラーやミスを防ぎ、不正・改竄の誘惑に耐え(させ)る方法が、今はそれしかないからだ。

 事程左様に、つまるところ情報の改竄や間違いを防ぐためだけの仕事、というのは、実は結構ある。それらがすべて、原理的には、そこらのPCの群と電気代で丸ごと代替できるというのが、ブロックチェーンのもたらしうる影響の本質的部分だ。

 将来、計算力やデータ容量がもっと安価で豊富になったら、身の回りのあらゆる端末がブロックチェーン検証(ビットコインでいうマイニング)に参加し、あらゆるライフログ、あらゆるデジタルデータが、一切改竄できない、SF的厳密世界が可能になるかもしれないのだ。

 近い未来の応用としては「実質的に情報の改竄を防ぐためだけの仕事」に当てはまりそうな職業を目指すのは避けた方がよいと思われる。これらは確実に、コンピュータに奪われる仕事になる。今日「そろばんで計算をする仕事」がないのと同じぐらい確実だ。

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