ジェラルド・M・ローブ『投資を生き抜くための戦い』8 場当たり的な約定は禁物

8 場当たり的な約定は禁物

 証券市場に実際に参入する時点で、なぜその約定を成立させ、いくらまで値上がりし、どれだけの期間が必要で、どれほどのリスクを冒す覚悟があるかを承知していることは基本ではなかろうか。ポジションを取るときにこれらの点をよく理解していなければ、適当なサイズや手仕舞うタイミングが、いったいどうして分かるだろう。

 ごもっともです。耳が痛いです。はい。

 ポジションは計画性なく手仕舞いするベきではないし、理由もなく持ったままでいるのはもっと悪い。ある主力株について、素早い値動きがありそうだと確信したとする。この状況で値動きを見越して株を買っても、すぐに値段が期待した方向に動かなければ、その株は売ってしまうベきだ。購入時、その株には素早い取引の対象としての価値しかない。したがって、それは「不本意な投資」として、長く保有されるベきではないのだ。
(中略)
 ポジションを考えるうえで、利食いにしろ損切りにしろ、どのレベルで手仕舞うかという明確な見当が必要である。

 これはよく言われることですね。短期投資のつもりで失敗して「いやこれは長期投資だから」と自己欺瞞的な言い訳をするのは、典型的な悪いパターン。

 最初のうちは、ポジションサイズを小規模に保つことを勧める。つまり、資本全体に対して、投資する資金を控えるのだ。投資家は小さなポジションでロングでの利益を得るように努めるベきだ――言い換えれば、ある株式を100株持って10ポイントの利益を目指すほうが、同じ株式を1000株持って1ポイント儲けるよりも理にかなっている。
 現金の備えがあれば緊急時の対応に役立つし、必要、恐れ、欲など、成功を脅かす人の弱さに影響されず、財務上の理由のみでポジションを建てたり手仕舞ったりすることができるようになる。無論、よく管理されたアカウントには「マージンコール(追証)」の可能性などみじんもあってはならない。

 自分の場合、キャッシュポジションの重要性を意識したのは、結構後になってからでした。推測ですが「急落の時などに買いたいが余裕資金がない」という経験をしないと認識できず、「急落の時などに買いたいと思う」こと自体に、まず初心者を脱する必要があるからかと。

 十分な資本を持たない若者が、自分には素早く稼ぐ能力があると考えているような特別な場合を除いて、信用取引やその他の形で借金をする必要がどこにあるだろう。資金が効率よく運用されていれば、比較的小さな投資が大きな利益をもたらし、ハンデの多い過剰投機が必要になることはあり得ない。
 その一方、トレーディングが不十分で、成果を上げるために高額の投資が必要になるとすれば、結局は損失が初期の利益を相殺してしまう。

 「資産規模が小さいことの不利を早めに解消することはとても有利」のような可能性もカバーされているところはさすがというか。最後の文については、常に高額の投資が必要とされる企業は云々、というファンダメンタルズの話を連想させます。

 大きなポジション、つまり少数の比較的大きなブロックの株式は、小さなポジションを多数抱えているよりも望ましい。(中略)大きなスケールでコミットしてもよいと確信できる取引に絞ることは、安全と利益への近道だ。
 そもそもポジションを取るときには、それについてよく知っていなければならない。そうであれば、撤退が遅れて重大な損失を招く場合でも、ずっと素早く手仕舞いできる。たくさんの小型株を買うときはそれほどの注意を払わず、最終的な損失の合計がいくらになるかもよく分からないまま、小さな損失を日々重ねることになる。手を広げすぎると知識の欠如をさらに不利にすることに、ほかならないのである。

 「卵はひとつの籠に盛るな」という分散投資の格言と、それをもじった「卵はひとつの籠に盛り、それをよく見張れ」という集中投資の格言がありますが、そのあたりの話ですね。

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