司馬遼太郎『関ヶ原』★★★★★

 司馬遼太郎は結構読んでいるはずだが、この『関ヶ原』と『項羽と劉邦』が好き。この話では「悪役」の家康が好き。印象に残っているところを3箇所抜粋。

 島左近と石田三成の会話。投資では「徳」なんて言葉あまり聞かんけど。

「古来、英雄とは、智弁勇の三徳備わったる者をいうと申しまするが、殿はその意味では、当代太閤をのぞけば、家康とならぶ英傑です」
 ――しかし。
 と、左近はいう。
「智弁勇だけでは、世を動かせませぬな。時には、世間がそっぽをむいてしまう。そっぽをむくだけでなく、激しく攻撃してくるかもしれませぬな。真に大事をなすには、もう一徳が必要です」
「つまり?」
「幼児にさえ好き慕われる、という徳でござるな」

 家康の秀吉・三成評。「株の儲けは我慢料」と言いますな。

「かの秀吉という仁は、筑前守と申したむかしから智恵がよくまわり、瞬時も手足をやすめず、さまざまな手を打つのにいそがしい仁であったが、しかしここは一番待たねばならぬとなると、大地が腐るまで我慢をするという気根があったな。三成にはそれがない」

 家康のギャンブル観。勝つべくして勝つということ。

「ばくちは勝つためにうつ。勝つためには、知恵のかぎりをつくしていかさまを考えることだ。あらゆる細工をほどこし、最後に賽をなげるときにはわが思う目ががかならず出る、というところまで行ってから、はじめてなげる。それが、わしのばくちだ。(中略)まことのばくちうちというものは、運などにはたよっておらぬ。わが智恵にたよっている。(中略)このばくちは、百や千の小銭を賭けているのではない。わしの生涯、わしの地位、領国、そしてわし自身を賭けている、負ければなにもかも無くなる。あだやおろそかにはこの勝負を考えておらぬ」

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